Past Exhibition
Printed Matters
Karl Blossfeldt
「芸術の原型」
1998.11.4 - 11.28
出品リスト
Barytpaper gelatin silver modern prints. 30 x 24 cm, titled, numbered, stamped, year of printing.
1. | Acer spec カエデの種子 |
2. | Achillea umbellata I ノコギリソウ |
3. | Aconitum spec トリカブトの新芽 |
4. | Aconitum II トリカブト |
5. | Apiaceae セリー葉鞘と若枝 |
6. | Aristolochia clematitis ウマノスズクサの花 |
7. | Centaurea grecesina ヤグルマギクの花 |
8. | Chrysantheum carinatum キクの葉 |
9. | Chrysantheum partheniym ナツシロギクの葉 |
10. | Chrysantheum segetum キクの葉 |
11. | Clematis heracleifolia クサボタンの花弁 |
12. | Cynara scolymus アーティチョークの花芽 |
13. | Delphinium II ヒエンソウー乾いた茎の一部と巻いた葉 |
14. | Delphinium III ヒエンソウー乾いた葉の一部 |
15. | Dryopteris filix I オシダー過巻状の若い複葉 |
16. | Equisetum hiemale トクサ |
17. | Fabaceae マメー若い羽状複葉 |
18. | N.N. (Gegenst ndige Verastung) 分枝 |
19. | Geum rivale ダイコンソウー萼片のない花芽 |
20. | Hordeum distichum オオムギ |
21. | Hyoscyamus niger ヒヨスの萼 |
22. | Koelpinia linearis コエルピニアの種子 |
23. | Melandryum noctiflorum フシグロの実の朔 |
24. | Papaver orientale II オニゲシの実の朔 |
25. | Phacelia tanacetifolia ハゼリソウの花ー互散花序 |
26. | Phlomis umbrosa エルサレムセージー十字形の葉のある枝の先端 |
27. | Pteridium aquilinum ワラビー過巻状の若い複葉 |
28. | Salvia argenta アキノタムラソウー開花している花の部分 |
29. | Sambucus racemosa ニワトコ |
30. | Saxifraga willkommiana ユキノシタの座葉 |
31. | Saxifraga geranioides ユキノシタの葉 |
32. | 3Seratula nudicaulis III ヤマボクチー結実した頭状花序 |
33. | Silene conica マンテマの実の朔 |
34. | Silene maritima マンテマー1つの花 |
35. | Silphium laciniatum II ツキヌキオグルマー乾いた葉の一部 |
36. | Taraxacum officinale セイヨウタンポポの花芽 |
37. | Teucrium botrys ニガクサの葉 |
38. | Tremastelma palaestinum マツムシソウの種子 |
39. | Trollius europaeus キンバイソウー乾いた葉の一部 |
40. | Trollius ledebourii キンバイソウ の果実 |
41. | Trollius ledebourii II キンバイソウ |
42. | Uniola latifolia ウニーオラー小穂状花序のある円錐花序 |
43. | Vicia faba ソラマメー茎の断面 |
Portfolio mit 12 Originalphotographien von Karl Blossfeldt in einer Auflage von 50 numerierten Examplaren. Einfuehrungstext von Dr. Volker Kahmen. Galerie Wilde, Koeln 1975.
1. | Seseli gummiferum イブキボウソウの葉 |
2. | Acanthus mollis ハアザミー包葉のある花序 |
3. | Dipsacus laciniatus オニナベナー茎についたまま乾いた葉 |
4. | Impatience glandulifera ホウセンカの茎と枝 |
5. | Papaver orientale オニゲシの花芽 |
6. | Papaver orientale オニゲシー実の朔 |
7. | Allium Ostrowskianum ネギー散形花序に似た花序 |
8. | Aescalus parviflora 花の小さいマロニエー枝の先端 |
9. | Aristolochia spec ウマノスズクサの新芽 |
10. | Cucurbita カボチャの蔓 |
11. | Blumenbachia Hieronymi ブルーメンバキアの実の朔 |
12. | Blumenbachia Hieronymi ブルーメンバキアの実の朔 |
展覧会概要
東京パブリッシングハウスでは、昨年の「アレクサンダー・ロドチェンコ:1920年代の写真と書籍デザイン」展に引き続き、Printed Mattersのシリーズとして、カール・ブロッスフェルト撮影による植物写真のモダン・プリント約50点を展示します。日本ではこれまであまり目にすることのできなかったこの作家の全貌を紹介します。
カール・ブロッスフェルトの日本で初めての個展
カール・ブロッスフェルト(Karl Blossfeldt 1865-1932) は、1920年代後半から30年代初め頃まで続いたドイツの美術・文芸思潮である「新即物主義(Neue Sachlichkeit)」―主観的な表現主義に対して、客観的実在に固執するリアリズムをその特徴とする写真のパイオニアの一人です。現在ではベッヒャー夫妻(Bernd und Hilla Becher)に連なるドイツ・リアリズム写真の系譜の最初に位置する写真家としての評価も高まっています。 本展はブロッスフェルトの日本で初めての個展であり、この希有な作家の写真をまとまった形で紹介する最初の機会となります。
教材としての自然の形態資料の収集
ブロッスフェルトは、出身地のシーロ(Schielo)で鋳造技師の見習いをしていた頃より、ベルリン王立芸術工芸美術館の奨学金を受けるなど、早くからその芸術的才能を認められました。 1890年から1896年には、M.モイラー(M.Meurer)教授についてイタリア、ギリシャ、北アフリカを旅行します。この旅行はブロンズのモデルやレリーフ制作の教育に使用するための自然の形態資料の収集を目的としたもので、旅行後、早い時期から写真に関心を持っていた彼のもとには、膨大な量の植物写真がその成果として残りました。1898年にベルリン芸術工芸大学の教授となった彼は、それらをもとに、そこで植物写真のアーカイブを作ります。 1925年にはベルリンの画廊主、カール・ニーレンドルフ(Karl Nierendorf)が、彼の植物写真の展覧会を行い、1928年にはそれらを収めた「芸術の原型(Urformen der Kunst)」を出版します。この作品集は大きな反響を呼び、すぐさまアメリカ、フランスなど様々な国で翻訳書が出版されました。 1932年には、2番目の作品集、「自然の驚異の庭(Wundergarten der Natur)」が刊行され、これも各国で版を重ねました。しかし彼はその成功を長く享受することなく、同年ベルリンで亡くなります。
シュールレアリストたちをインスパイア
これらのブロッスフェルトの写真は、フランスの前衛雑誌「ドキュマン(Document)」1929年第3号でも紹介され、シュールレアリストたちに有機的な形態への関心を抱かせる大きな契機となりました。
植物の形態の不思議さ、美しさを焼き付けた冷徹なまでの観察眼
最近この2冊を収録した写真集をはじめとして、たくさんの種類の書籍がドイツで出版され、彼の写真のイメージを目にする機会が増えました。しかしブロッスフェルトのプリント写真自体は、日本ではこれまで、グループ展で数点展示されたり、作品集によって紹介されるのみで、その全容は未紹介であるといえます。 その冷徹ともいえる客観的な視点からとらえられ写真に定着された植物の形態の不思議さ、また美しさ、そしてそこに現れる生命力は、近年高まっている写真史上での評価を超えて、人々に驚異や感銘をもたらすものと確信します。
カール・ブロッスフェルトは現在では、新即物主義のパイオニアとして写真の歴史にその名が刻まれていますが、彼自身は自分をプロの写真家と思ったことはありませんでした。彼は彫刻家であり、アマチュアの写真家であり、国立ベルリン自由芸術・応用芸術合同学校で鋳造を教える教授でした。 彼の植物の世界に対する関心は、純粋に芸術上のものであり、教育的な性格のものです。彼が残した数多くの植物写真は、彼が学校で担当した「生きた植物による彫塑」という講座での教材として使用する目的で、自作の写真機で撮影されたものだったのです。 これらの植物写真は、わたしたちに普段見慣れぬ新しい世界を気付かせてくれます。写真に修正を施すこともなく人工の効果をねらうこともなく、単に数倍に拡大することによって彼が証明したのは、人間精神によって作られた形(芸術)と、自然に成長した形(植物)とのあいだには、近い類縁関係があるということでした。
カール・ニーレンドルフ「カール・ブロッスフェルト『芸術の原型』への序文」1929年より
(ブロッスフェルトの写真は、)どの写真も、自然と芸術において創造意志が一致していることを明らかにしている。この一致は、写真技術という即物的な手段によって記録されており、まさにそのことによって、いっそう説得力を増している。カメラの眼によって自然に肉薄する芸術家の前には、過去の総ての様式的形態を含む世界が展開する。この世界には、劇的な緊張から絶対的な安寧、そして深淵の叙情的な精神の表現さえもが含まれる。ロココ装飾の舞い飛ぶような優雅さ、ルネサンスの燭台の英雄的な峻厳さ、ゴシックのフランボワイアン様式の神秘的にもつれた唐草文様、高貴な列柱、異国的な建築の丸屋根と塔、金の打ち出し細工が施された司教杖、練鉄製の格子細工、華麗な笏、それら総て人間によって造られた形態は、植物の世界にその原型をもっている。それどころか、ダンス、すなわち芸術と化した人間の肉体さえもが、ある蕾のうちに自らの比喩を見いだしている。
カール・ブロッスフェルト「『自然の驚異の庭』への序文」1932年より
芸術におけるあらゆる健全な発展にとって、産出的な刺激が不可欠である。永遠に涸れることない自然の活力の泉、あらゆる時代の人々がその泉からそうした産出的な刺激を引き出してきたのであるが、芸術もそうした泉からのみ、健全な発展のための新たなエネルギーと刺激を再び受け取ることができるのである。